研究実績

研究活動

当科では、大学の使命の一つとして、研究活動を基礎及び臨床面で幅広く行っております。現在進行中の研究は下記の通りです。

基礎研究

1心筋のエネルギー代謝のイメージ化と評価方法
心機能は、心筋で産生されるエネルギーと関係しており、その生産には心筋への血流状態、酸素供給などが関与しています。この状態変化を、リアルタイムに、映像化し評価する試みを行っております。
2ヒト血管平滑筋細胞の形質変換
動脈硬化の進展には、動脈硬化危険因子の刺激による血管壁構成細胞での各種反応が関わっています。われわれは、これらのうち、血管平滑筋細胞の形質変換という反応に着目しております。現在、冠動脈バイパス手術時に採取した内胸動脈の断端を用いて、平滑筋細胞の培養に成功、形質変換のメカニズムと薬剤による抑制効果を研究しています。
3血管壁へのフィブリン糊の接着強度
当科では急性大動脈解離の縫合部断端形成および補強にフィブリン糊を使用しており、その至適使用方法について岩手大学工学部と共同で基礎研究を行っております。

臨床研究

1急性大動脈解離後の呼吸不全と好中球エラスターゼの関係について
急性大動脈解離後の呼吸不全に好中球エラスターゼの上昇が関与している可能が示唆されました。 術直前の好中球エラスターゼ(NE)高値群(H群)、
低値群(L群)間でのP/F比(血中酸素分圧/酸素濃度比)の経時的変化の比較
2心房性利尿ペプチドの臓器保護効果
胸部大動脈手術では、他の開心術に比較し循環停止、長時間の人工心肺使用、出血等などのため術中の侵襲は多大なものとなります。
近年、心房性利尿ペプチド(carperitide)を開心術の周術期に使用することで 心、腎機能保護効果、神経体液性因子に対する抑制効果を得られると報告されています。このような報告に基づき、より手術侵襲が大きい胸部大動脈手術での心房性利尿ペプチド(carperitide)の使用効果について当科で研究を行っています。
3血管壁へのフィブリン糊の接着強度
a. 冠動脈バイパス術後の心房細動に対するカルベジロールの有用性 術後の心房細動の発生は心拍出量の減少のみならず心拍数の上昇により冠血流量の減少を引き起こしたり、心筋酸素消費量を増加させるため心筋虚血を増悪させます。特に冠動脈バイパス術後の心房細動は約 30% に発生し、術後の morbidity にも影響が生じると報告されています。我々の施設では術後心房細動の予防に対しカルベジロールを投与し心房細動の発生を抑制することを発表しました(非投与群心房細動発生率:投与群発生率 =34% : 15% 、 P=0.0094 )。また、カルベジロールの投与が術前後の心機能に影響しないことも明らかにしました。 b. 心大血管手術後の心房細動の予防に関する研究 開心術後の心房細動は15~60%に発生するといわれています。現在β遮断薬を中心に大動脈弁手術や胸部大血管手術後の心房細動の予防に関する研究を行っております。